ベトナム経済市場レクチャー ベトナム経済市場レクチャー

ベトナム美容業界レクチャー(1)

2012年10月6日(土)
ホーチミン市JTBベトナムオフィスにおいて、日本の学校法人「三幸学園」が3年前に開校した美容学校の現地責任者から、美容業界、美容学校の状況についてレクチャーを受けた。

レクチャーの様子

ベトナム美容業界の現状

ベトナムの美容業界は、経済発展に伴って美容に関心を持つ裕福な方が増えている。つい最近まで「青空床屋」と言われるストリート美容室みたいなものがあったが、最近では店舗型が多く見受けられる。しかし現状は「カットするだけ」で良いサービスが受けられないというのが現状である。ただ最近では、韓国の国策による韓流ブームの影響で、ファッションに目覚めた若い人達が美容室に行くようになってきた。日本のような「おもてなしのサービス」のようなものを教育することができれば、ベトナムでは「一流サロン」ということになり、そのようなサービスができる美容師の育成を目指している。
ベトナムでは「美容」と「教育」はすたれる事がないといわれている。

ベトナムの美容教育について

ベトナムに来て3年半が経ち、ベトナム人教師に技術を教えてきたが、なかなか日本と同じようには行かないというのが現状。それは、日本と教育の仕方が違う事に大きく起因している。日本では基礎技術からひとつひとつ教えるが、ベトナムでは技術がバラバラで、美容に対する想像力や芸術性がなかなか伸びない。「どうして、先生はこんな事を言っているんだろう?」という教える以前の地ならしから始める必要があるのが現状。

三幸学園に対する質問

Q : 授業料と言うのは、ワンカリキュラムいくら?
また、途中入・退学の場合はどうか?
A : 学校によって違うが、2ヶ月間で大体200ドルというところが多い。
途中入・退学でもその期間であれば200ドルとなっている。

Q : 現在、途中入・退学の生徒はいるか?
A : 私の授業は基礎から教えているので、途中入学は、カリキュラムが始まって1ヶ月以内でないと認めていない。

Q : 美容資格がまだない中で、ある程度学んだのでそろそろ辞めたいという生徒はいるのか?
A : 過去にはそのような生徒もいたが、最初のオリエンテーションで指導するようになってから今は辞めなくなった。

Q : 2ヶ月で200ドル(平均収入から考えるとかなり高い)だという事だが裕福な家庭の子が多い?
A : 親御さんが払ってくれる場合がほとんど。教育熱心なのでコツコツお金を貯めて払う親もいるので、必ずしも裕福な家庭の子供達とは限らない。

Q : 教育全般への関心はどうか?
A : ベトナム人は勉学熱心で、昼間の仕事は5時きっかりに退社し、夜は英会話など学校で色んなことを勉強する人が多い。

Q : ベトナム人の色彩感覚とセンスについてはいかがか?
A : ベトナム人は、美意識は高いし、バランス感覚はあるのですが、飽きっぽいところがあって、基礎的なものが身につくまで繰り返しやることが苦手なので、そこがネックとなっている。その飽きっぽさをうまく褒めながら伸ばすという事が大切だが、褒め過ぎると図に乗るので、ほどほど潰しながらやっていかなければならない。

Q : 国には奨学金制度みたいなものはあるのか?
A : 海外の大学に留学する場合には奨学金もあるようだが、国内ではない。
ただ、学校によってはディスカウントなどはある

Q : 学校を卒業すると、美容院に就職するケースが多いのか?
A : 半分ほどが美容院に就職し、残りの半分以上は独立する。

Q : お店に入って、徒弟制度みたいなものはないのか?
A : ある。半分ぐらいの人達は美容院で修行しながら成長する。

Q : 技術も未熟で、すぐ独立するというのは開業資金もかかると思われるが?
A : 開業資金がそれほど高くなく使う設備なども安いものが多い。開業資金は日本の10分の1。

Q : 美容学校に来る生徒の年齢
A : 19~47歳までいる。20代、30代の人も多い。若い中卒や高卒の人達だけでなく、いい給料をもらっていたOLさんや、もう一度しっかり美容技術を勉強したいという人達も。海外に移住する事が決まっているので入学してく る場合もある。

Q : 入学試験は?
A : ありません。

Q : 文盲率などは影響するか?
A : その場合はベトナム人 講師に教えてもらうが、必ず、彼らが教えた事がちゃんと伝わっているかどうか確認する。

Q : 毛髪に関する知識はどうか?
A : 毛髪やケミカルについては知識が乏しいので、学校でも指導している。薬液の成分や、どのような効果があるのか指導している。薬液も最初は日本からのものを使っていたが、今は現地のものを使っている。

Q : 技術や知識が未熟なまま開業する人が多い一方で、技術がある店もある。店を選んでいるか?
A : 技術が高い、低いという事を見分ける一般の人達の意識も低く、技術の高低が成功にはあまり関係ない。むしろ、やり方の問題で、TV に出ているスタイリストがやっているから流行ったりするので、派手さが受ける傾向もある。

Q : 成功が技術とは関係ないという事か?
A : はい。今の段階では、如何に売り出すかが重要。口コミの影響力が大きい。

Q : 価値観というのは変わるか?例えば、日本の美容師が来てショーなどをやって、ベトナムの業界の人達は  どのように感じているか?
A : 会場に来る人達はプロが来るので、レベルが高価値なども理解している。

Q : 日本人経営者の美容室で、日本人がカットしている店は、どれぐらいあるか?
A : ホーチミン市内で日本人が実際カットする店は、4~5軒しかない。
日本人が経営していて、現地人がカットする店が3軒ほどある。

Q : 日系の美容室は、商材はどこから仕入れているのか?
A : 外資系メーカーを使うケースが多いが、日本から商材を持ち込むケースも多い。

Q : 日系サロンは、日本人顧客を対象にしているのか?
A : 基本的にそうです。現地人も日系サロンに行くケースはあるが少ない。MANOMANOさんは、現地の裕福な人 達も対象にやられているが、基本的に日系のサロンは日本人相手がほとんど。ピラミッドの中でも、極めて頂点の顧客を対象にしている。日系のサロンは、現地の人は時間に遅れるケースもあるので、断る場合もあると聞いている。

Q : ディーラーの数はどれぐらいか?
A : 何軒あるかはわからない。実態は掴めない。

Q : 日本に行って日本のサロンで修行するのは、ステータスになるのか?
A : そうは言えるがお金がかかる為、そんな人は多くない。

Q : (最近は若い人の間では韓流ブームだという事だが)韓国の技術より日本の技術が優れているという意識は大分薄れてきているのか?
A : 韓国は国策で、最近はドラマなどもTV でやっていて韓国系の美容院も人気がある。
日本と韓国を比べた場合、ベトナムでは日本の情報があまりにも少なく薄れてきているという事は言える。

Q : 韓国系のサロンは多いか?
A : 数字はわからないが、多いと思う。

Q : ディーラーがインフラを構築する為に、サロンをサポートするような事はやっているのか?
A : ディーラーさんが、いくら以上買ったサロンにはセミナーなどをやっているが、今回は中国人スタイリスト、次回は別の国の人というケースも多くまとまりがない。

Q : 卒業生からどのような事を聞くか?
A : 入学前は、ヘアショーなどのTVは大好きで見ていたが、卒業後はくだらないと思うようになった。
⇒大した技術ではないように思うようになった。学校に対してはいい話しか聞かない。

Q : 自己学習の意欲はあるか?
A : 新しいものを身に着けたいという意欲は非常に高い。年配の人達は美容師自体のイメージが社会的には高くないと考える人が多いが、若い世代ではファッション性も高い為、段々と人気が出てきた。美容学校では、1年ですべて教える。40代以上の美容師と若い美容師は感覚がまったく違う。年配の美容師は職人的だが若い人はファッション性を求めている。

Q : 美容師にはどのような技量が求められるのか?また、お客はどのような技量を求めて美容院に行くのか?
A : 技術や知識に対する欲は高いのだが、それ以前の基本的なサービス精神がない事が問題で、新しい技術やものにはすぐに飛びついてしまう。若い人は、日本のファッション誌のスタイルをやって欲しいというお客は多いが、やってくれるところが少ない。

Q : 美容業界では、サービスを供給する側と享受する側の間にズレみたいなものはあるのか?
A : あると思う。日本人の感覚でものをみると駄目で、これは海外のほとんどで言える事だと思う。お客様が望んでいる事を把握して大体やっているケースがほとんど。ただ、ベトナム人の考え方ややり方も考慮しながらやることが必要。

Q : 日本にベトナム人を派遣するなりして、日本人の感覚を学んでもらって仕事をしてもらう事は可能か?
A : それはよくわからないが、どこまで日本の事が好きかどうかというと疑問。あくまでもベトナム人であり、外国人である事を理解しながらやっていくことが重要。

Q : ベトナム人の有名な女優さんなどのヘアスタイルを真似るような事はあるのか?
また、そのような有名人はいるか?
A : 今は韓流スターが人気なので、その影響は受けていると思う。ヘアスタイルに写真を使う場合も、無料で使う事ができる。(日本人は著作権でなかなか使えない。)

Q : ベトナムは映画産業はどうなっているか?
A : ベトナム系アメリカ人がハリウッド映画界で活躍し始めている。これから発展して行くと思われる。
アメリカの文化が人気。レディー・ガガなどは若い人に人気がある。日本の映画は人気がなく、アニメが人気。

Q : 直営店やフランチャイズなど色々あるのだが、日系サロンが撤退する理由は何か?
A : 価格が高く、場所の割にはお客が入らなかったケースがある。

Q : こちらに岩田さんというスタイリストさんが経営しているサロンがあるが、上手く行っているのでしょうか?
A : 日本人や現地の富裕層に人気があり、週末は予約で一杯だと聞いている。

Q : ベトナムの美容サロンは、路面店が多いのか?
A : やはり、1階のグラウンドフロアが多い。(外国人は土地を持てない)

Q : 我々が泊まっているホテルレジェンドは、ビジネス街と言えるのか?
A : 東京で例えて言えば、池袋みたいなところ。

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